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9月30日、愛知県労働局はエヌ・ティ・ティ・システム開発株式会社に対して、職業安定法44条で禁ずる労働者供給事業を行ったとして労働者派遣事業改善命令を発しました。

派遣元事業主に対する労働者派遣事業改善命令(厚生労働省HP)

(労働者供給事業の禁止)
第44条
何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

今回問題とされたのは、業務委託契約と称する労働者派遣事業及び労働者供給事業を行ったことです。(例外的に許されるのは、45条に定められる労働組合等が行う労働者供給事業です)

今回のように、違法と考えられるような業務委託や労働者供給は少なくないように思います。
そこで、業務委託(請負)についておさらいしてみましょう。

業務請負とは

業務請負と言うためには、請負元の事業主において以下の条件を満たす必要があります。
(職業安定法施行規則4条1項)

  •  作業の完成について財政上及び法律上の全ての責任を負う
  •  労働者を指揮監督する
  •  労働者に対し、使用者として法律上の全ての義務を負う
  • 自ら提供する機械等若しくはその作業に必要な材料等を使用するもの又は企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うもの、単に肉体的な労働力を提供するものではないもの

よくあるのは請負なのに客先に常駐して注文者の指揮命令を受けながら働くような形ですが、これは2番めの要件を満たさず偽装請負に該当する可能性が出てきます。労働者派遣事業や労働者供給事業になるためです。

もちろん、例えば自社で提供しているシステム機器の保守管理等のために労働者を送り、自社の指揮命令下で働かせるのは問題ありません。

時々ニュースで「偽装請負」と言われるのは、形式的には請負契約としているが実質的に派遣または労働者供給であるというパターンが多いです。つまり、派遣先の指揮監督を受けているのにも関わらず請負契約としているから偽装請負とされるのです。

派遣とは

派遣とは、自己の雇用する労働者を他人のために労働させるものです。

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第2条1項
自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。

労働者派遣については法律で様々な規制がされていますし、まず派遣事業を行うには届出や許可が必要となります。

業務請負と派遣の違いは、指揮命令権が派遣先にあるという部分です。
請負の場合は請負元のほうで指揮命令を行いますが、派遣の場合は派遣先の指揮命令を受けます。

労働者供給事業とは

労働者供給事業はいわゆる「人貸し」のことで、供給契約に基づき他人の指揮命令下で労働をさせることを言います。そのうち、派遣に該当するものは除きます。

職業安定法第5条第6号(労働者供給の定義)
 この法律で労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣法第二条第一号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものとする。

過去に中間搾取などが問題視され原則として禁止されています。
請負との違いについては派遣と同様に、指揮命令権がどちらにあるかという部分です。
manual_01(厚生労働省マニュアルより)

今回のように偽装請負が問題とされる事例はよくありますが、どの事業者も悪意をもってやっているというよりは、意図せず偽装請負をしてしまっていたというケースが多いのではないかと思います。
請負契約をしている事業者様は、偽装請負に該当していないか一度見直してみましょう。

https://blog.no-tas.com/wp-content/uploads/2016/10/manual_01-823x1024.jpghttps://blog.no-tas.com/wp-content/uploads/2016/10/manual_01-150x150.jpg高橋 圭佑総合企業法務契約実務,偽装請負,労働者派遣,労働者供給事業9月30日、愛知県労働局はエヌ・ティ・ティ・システム開発株式会社に対して、職業安定法44条で禁ずる労働者供給事業を行ったとして労働者派遣事業改善命令を発しました。 派遣元事業主に対する労働者派遣事業改善命令(厚生労働省HP) (労働者供給事業の禁止) 第44条 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。 今回問題とされたのは、業務委託契約と称する労働者派遣事業及び労働者供給事業を行ったことです。(例外的に許されるのは、45条に定められる労働組合等が行う労働者供給事業です) 今回のように、違法と考えられるような業務委託や労働者供給は少なくないように思います。 そこで、業務委託(請負)についておさらいしてみましょう。 業務請負とは 業務請負と言うためには、請負元の事業主において以下の条件を満たす必要があります。 (職業安定法施行規則4条1項)  作業の完成について財政上及び法律上の全ての責任を負う  労働者を指揮監督する  労働者に対し、使用者として法律上の全ての義務を負う 自ら提供する機械等若しくはその作業に必要な材料等を使用するもの又は企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うもの、単に肉体的な労働力を提供するものではないもの よくあるのは請負なのに客先に常駐して注文者の指揮命令を受けながら働くような形ですが、これは2番めの要件を満たさず偽装請負に該当する可能性が出てきます。労働者派遣事業や労働者供給事業になるためです。 もちろん、例えば自社で提供しているシステム機器の保守管理等のために労働者を送り、自社の指揮命令下で働かせるのは問題ありません。 時々ニュースで「偽装請負」と言われるのは、形式的には請負契約としているが実質的に派遣または労働者供給であるというパターンが多いです。つまり、派遣先の指揮監督を受けているのにも関わらず請負契約としているから偽装請負とされるのです。 派遣とは 派遣とは、自己の雇用する労働者を他人のために労働させるものです。 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第2条1項 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。 労働者派遣については法律で様々な規制がされていますし、まず派遣事業を行うには届出や許可が必要となります。 業務請負と派遣の違いは、指揮命令権が派遣先にあるという部分です。 請負の場合は請負元のほうで指揮命令を行いますが、派遣の場合は派遣先の指揮命令を受けます。 労働者供給事業とは 労働者供給事業はいわゆる「人貸し」のことで、供給契約に基づき他人の指揮命令下で労働をさせることを言います。そのうち、派遣に該当するものは除きます。 職業安定法第5条第6号(労働者供給の定義)  この法律で労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣法第二条第一号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものとする。 過去に中間搾取などが問題視され原則として禁止されています。 請負との違いについては派遣と同様に、指揮命令権がどちらにあるかという部分です。 (厚生労働省マニュアルより) 今回のように偽装請負が問題とされる事例はよくありますが、どの事業者も悪意をもってやっているというよりは、意図せず偽装請負をしてしまっていたというケースが多いのではないかと思います。 請負契約をしている事業者様は、偽装請負に該当していないか一度見直してみましょう。人事労務・企業法務・仕事効率化・ITツールに関すること等を書いています。